【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
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 マリアが目蓋を閉じてからやっと眠りに就けたのは、オレンジ色の暁光がジルベルトの寝室に差し込み始めた頃だった。

 ぼんやり目覚めるとすでに日は昇りきっていて、窓の外で囀る小鳥たちの声がかしましい。
 マリアの隣にジルベルトの姿はなかった。

 身体の奥に火照りを残したまま、ゆっくりと起き上がる。
 自分の唇にそっと触れれば、途端にはずかしくなって。「ぼ!」という音を立てて顔が火を吹きそう……!

 寝不足のせいでもあるが、いつもと同じに眠っただけなのに、身体中が鉛のように重い。

 ——大変……すっかり寝過ごしてしまったみたい
 
 自室で待っているジル猫のことが気にかかる。
 まるで自分の子のようにジルに優しくしてくれたラムダはもういないのだ。

「ジルにご飯をあげなくちゃ」

 ラムダの代わりに今朝から新しいメイドがあてがわれるはずだけれど、どんな人なんだろう。猫好きな人なら良いのだけれど……。
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