【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 まだだよ、お腹すいた!

 空腹を訴えるように鳴き、小さな身体をくるくると何度もすり寄せてくる。そんなジルを抱き上げ、マリアは部屋の中を見渡した。

 ジルの食器はあるものの、肝心の《《中身》》は……からっぽだ。

「ラムダが突然帰ってしまったし、ジルのお世話のこと、引き継ぎなんてきっと出来ていないわね」

 それにしても——。
 メイドを呼びたい時はどうすればいいのだろう。

 マリアがわざわざ呼ばなくても、ラムダはいつも絶妙なタイミングで部屋にやってきた。
 ジルのご飯をやり忘れていたことなど一度だって無かったし、ラムダにいて欲しい時には、いつでもそばで寄り添ってくれた。

「ジル……。ラムダがいないと寂しいわね。あなたのご飯も、新しいメイドさんに持ってきてもらわなくちゃいけないのだけど」

 マリアの朝食だってまだだ。
 とはいえ柱時計は午前十時を示している。朝食を摂るには遅い時間だった。

「失礼いたします」

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