【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「にゃー」
(ふむ、綺麗だにゃ。でもそれ、なんの鍵?)

 少し動かすだけで煌めきを放つので、目立たないようにワンピースの胸元にしまいこむ。
 マリアの小指ほどの大きさのそれは、胸の上に程良くおさまった。


 刺繍道具とジルを手籠に入れて両手で抱え、ラムダも気に入っていた宮殿のバラ園に向かう。
 真冬であっても柔らかな日差しは春のようにあたたかく、バラ園の薔薇たちは一年を通して枯れずに美しく咲き続けるそうだ。

 バラ園の真ん中にある小さな噴水の、白いタイル張りの縁に腰掛ける。
 爽やかな風が周囲の木々を揺らし、マリアの頬と髪とをかすめていった。

 立ち上がって一度大きく深呼吸をする。
 身体の芯まで冴え渡るような心地よさに、目を閉じて空を仰いだ。

「ジルベルト、皇太子、殿下……」
 
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