【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 皇太子の正体がジルベルトだと知った時から、不思議なことに死を怖れる気持ちがゆるゆると溶けてしまった。
 代わりにマリアをいっぱいに満たすのは、抑えのきかぬ熱い想いと、甘やかに薫る幸せな思い出だった。

 ——優しく揺れる碧い眼差しが、私を溶かすくちづけが。他の誰かのものになってしまうのなら……。
 王子を失った人魚姫のように、海の泡になって消えてしまいたい。

 マリアがゆっくりと目蓋を閉じたとき、不意にどこからか懐かしい声が聞こえたような気がした。

『マリア様ったら、またそんな弱気な事を言って。わたくしが思い切り背中を叩いて差し上げますわ!』
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