【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 まぶたを開ける間も与えられぬまま、次のくちづけが落とされる。
 強くすれば壊れてしまう宝物をそっと確かめるような、愛しさにあふれた優しいくちづけ。数日会えずにいた寂しさが、ゆるやかにほどけていく。

「ん……っ」

 頭の芯がくらりと(しび)れる。
 だけど、どうすればうまく息ができるのかわからない。

 戸惑っていると、くす、と微笑う吐息とともにジルベルトの唇が離れた。

「マリアが窒息寸前」

 慌ててまぶたを開けば、長いまつ毛を伏せた碧い瞳が見たこともない無邪気さで微笑っている。

 星祭りの日に十八歳の誕生日を迎えたが、ジルベルトはさらに五歳の年嵩だ。
 そして今は、若くして万民の上に立つ皇太子の、他を圧する泰然とした威厳や威圧は見当たらない。

 マリアの目に映るのは、無邪気なひとりの青年が嬉しそうに口元をほころばせる姿だった。

「息継ぎができなくて、申し訳、ありません……っ」

 失敗をしたわけではないのだけれど。
 頬を真っ赤にしてうつむけば、いつもの癖でつい謝ってしまう。

 ジルベルトが黙っているので、おそるおそる顔をあげると。うっすらと上気した、見惚れるほどなまめかしい微笑みに見つめられていた。

「その初々しさは甘いな……融けてしまいそうだ」
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