【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 不意に、後頭部の髪を撫でられた。
 
 優しい指先がそのまま髪の上を滑る。
 それが腰元まで降りた時、強い力でマリアの引けた腰をジルベルトの身体の方にぐっ! と寄せられた。

 長い髪がジルベルトの腕の上で艶やかにたわむ。
 もう片方の腕がそれを抱えるようにして、大きな手のひらがマリアの後頭部を包んだ。

「さっきのは反則。俺の自制が効かなくなったらどうするの」
「もっ、申し訳……っ」
「謝るのは俺のほうだ。寂しい想いをさせているのは俺だから」
「お、怒って、いらっしゃらないのですか……?」
「怒る? いや寧ろ嬉しすぎて、このまま組み敷いてしまいそうだ」
「申し訳ありませんっ」
「ええ……?」
「そういう衝動は、身体に良くありませんよね?」
「いや、衝動を抑える方が身体には良くないだろう」

「………そう、なのですか?」
「ふっ! 君の天然には敵わぬな」

「申し訳……」
 マリアの謝罪をくちづけでふさいだジルベルトの両腕が、今度は膝の裏と背中に回され、横抱きに抱え上げられた。
< 395 / 580 >

この作品をシェア

pagetop