【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 唇を何度重ねても、呼吸のしかたがわからない。

 下働きの仕事のセンスが無いだけでなく、くちづけまでちゃんと出来ないなんて……! そんな忸怩たる想いまで、ジルベルトは熱い吐息と眼差しで帳消しにしてしまうのだ。

 寝台に運ばれながらも、キスの雨は続いている。
 ついばむようなくちづけのひとつひとつが、身体中を震わせるような悦びに変わる。

 同時に———。
 失ってしまう事への恐れが、求めあう想いを強くする。

 ふたりに見えているのは、今にも千切れてしまいそうなほどに細く、脆い糸だ。
 叶う事ならばいつまでも切れないで欲しいと願いながら、優しく、丁寧に、手繰り寄せて……。

 そう遠くない未来。
 せめて、別れのその時が来るまではと。


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