【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
8、王女の片鱗〜『鍵』
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 アーニャに先導されたマリアは、明るい光が煌々と差し込む大理石張りの壁の美しい廊下を静々と歩いている。
 
 途中、『本宮』と呼ばれる豪奢な宮殿の中を通ったが、もう皇太子と遭遇する事を恐れる必要は無くなったので、思いのほか落ち着いていられたと思う。

 マリアが目にしたのは『本宮』のなかでもほんの一部だが、見上げても見えないほど高い天井いっぱいに描かれた絵画の壮麗さや、壁や柱に施された繊細な装飾の数々は目を見張るほどに美しい。
 建物全体の壮大さはと言えば、獅子宮殿がそのまま二つすっぽりと収まってしまいそうだ。

 静まりかえった本宮内の随所に立派な騎士服に身を包んだ者たち——警吏だろうか——が置かれていて、まるで蝋人形のようにみじろぎもせず、目だけでぎろりとマリアたちを追ってくるのは少々不気味ですらあった。

 ——まさにここは帝国の権力の象徴。ジルベルトも、きっと『本宮』のどこかにある広間で謁見や公務をするのでしょうね。

 広々としたホールを抜ければ、獅子宮殿に似た白っぽい建具やモールディングが施された幅広の廊下が続いている。マリアたちはその中心を歩いた。
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