【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 断ることもできたかも知れない。
 けれどマリアはずっと、バラ園で「リュシエンヌ」と叫んだ女性のことが気になっていた。

 王女リュシエンヌを知る若い女性——が居るのだとすれば、『後宮』である可能性が高い。
 あくまでも可能性だけれど。

 それに、このタイミングで後宮のお茶会に招待されるなんて——マリアの知らぬところで、何か大きな力が働いているのではなかろうか。
 不確かではあるけれど、そんな気さえしてしまう。

 怖くないと言えば嘘になる。だがもしもそうだとすれば、行かぬと言えばますます怪しまれるだろう。
 もうすでに正体がばれてしまっていたら、後宮のお茶会に呼ばれるどころではなかろう。すぐにでも捕えられ、牢にでもぶち込まれているはずだ。

 ——見えない先のことを恐れていても仕方がない。まだ、望みはある。その人が後宮にいるかも知れないと思うのだって私のただの想像だもの。糾弾されて捕まると決まったわけじゃない。
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