【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「今日の善き日、後宮の春のお茶会にご招待を受けたあなたには、来賓として大公夫人の斜め前のお席に座っていただきます。ほら、そこですわ。ご遠慮なさらず、どうぞ座っていただいて構いませんのよ?」

「はい……有難うございます、リズロッテ様」

 促されるままに、席までの数歩を歩き始めた時。
「きゃ!?」

 ワンピースの裾を誰かに踏まれ、前のめりになって倒れ込む。
 咄嗟に肘をついたために床に顔面を打つのはかろうじて免れたが、肘を擦りむいてしまった。

 ——痛っ……

 苦痛に思わず顔を歪めるも、周りからはくすくす……息を吐くような笑い声が鼓膜を撫で上げる。

「あら、お気をつけくださいまし」
「着席する前に、皆さんにご挨拶をお願いいたしますね?」
「そいういえば……。下働きをしていた方が、まともなご挨拶なんてできるのかしら」
「言われてみればそうですわね」
「わたくしたちが教えて差し上げましょうか? 淑女の礼を」
「意地悪ですこと。あれは長年の習慣で身につくのですもの、教えられてすぐにできるものではありませんわ……」
「まぁ、そうでしたわね? ふふっ」

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