【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 マリアは、ぐ、と歯を噛みしめ、拳を握りしめた。
 おもむろに立ち上がるが、肘と膝がじんじん痛む。
 どうやら膝も擦りむいたらしかった。

「逆に教わりたいくらいですわ……女嫌いとも称される男性を、口説き落とす方法を……!」
「それもそうですわね? あはははっ」
「ふふふっ」

 ——よくわかった。
 この女性(ひと)たちは、私が獅子宮殿でジルベルトの庇護を受けているのが気に入らないのだ。

 マリアは示された席の近くまで歩くと、テーブルの角に立ち、ただ深く頭を下げた。

 ——たとえここで酷い目にあわされたとしても。
 下働きをしてきた下女だと思われているならば、その方が都合がいいわ。

「ねぇ、ご覧になって? あれが天下の皇城の、我らが後宮のお茶会にご招待を受けた者のする服装かしら」
「いやだ、転んで汚れてしまっているわ」
「ジルベルト様に素敵なドレスの数々をご用意頂いているでしょうに。無知とは恐ろしいものね?……惨めですこと」
「本当よ、あんな格好をしてきて。ジルベルト様に恥をかかせるおつもり?」

 頭を下げているので、誰が何を言っているのかはわからぬけれど。
 口々につぶやかれる悪口には気が滅入ってしまう。
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