【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
二階、三階まで上がれば、階段ホールを通してマリアの声が響いた。数人の侍従がやってきてマリアを取り囲む。
「お前っ、下級メイドじゃないか。ここはお前のような者が来る場所じゃない。一体どういうつもりだ!?」
「さ……宰相様に、お話が……っ」
息を切らしたマリアの訴えはままならない。
「宰相様がお前のような者の話を聞かれるはずがないだろう? それに、その格好は何だ……! 恐ろしい。気でも触れたのか」
取り押さえろ。
侍従の一人が駆けつけた警吏に冷たく言い放つ。
「待ってください……。宰相様に、この名前をっ。彼の命が危ないのです。どうか、彼を助けて…——っ」
「気狂いの女だ。連れて行け」
警吏に両腕を掴まれたマリアは、最後の言葉を訴える。
「ジルベルト……! 誰か、この名を知る者はいませんか……?!」
途端、王宮内の空気がピンと張り詰める。
「今、何と言った」
侍従の中で一番の年長者だと思われる男が、マリアに近付いた。
「お前は何故その名を知っている?!」