【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 マリアの顔から血の気が失せていくなか、リズロッテは頬を紅潮させ、興奮と喜びに身体を震わせていた。

 ——哀れな一匹の(ねずみ)、リュシエンヌ王女。
 よくも今までしぶとく生き延びて、上手く皇城に潜り込んだものね。
 だけどその運もここで尽きる!

 リュシエンヌ王女に恨みはないけれど、このチャンスを逃す手はない、最大限に利用させてもらう。
 もしもジルベルト殿下に近付いたその目的が『復讐』ならば……いいえ、王女の目的なんてどうでもいい……!

 帝国は今でも生き残りの『雲隠れ王女』を探している——見つけ出して殺すために。

 皇太子はこの女に騙されている。
 でなければ、帝国のためだけに生きると名高いあの冷徹な男がいとも簡単に愛欲に塗れ、『エタニティ・プロンプト(永遠の指示)』を贈るはずがない。

 ましてや——『雲隠れ王女リュシエンヌ』に!

 素性を偽り隠して、帝国の皇太子を唆したあの女の罪は死罪よりも重い。
 わたくしが正体を明かせば、あの女は即座に捕えられるだろう。

 万が一《《人違い》》だったとしても、わたくしの記憶の中に在るリュシエンヌ王女の情報は、帝国が喉から手が出るほどに欲しがっているもののはずだ。

 もっと早く思い出すべきだった。
 でも、いよいよだわ。
 このわたくしの……我が国への支援に繋がる大きな功績になる……!
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