【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「ひっ……!」

 今度はリズロッテが冷や水を飲む番だった。
 頭上から、そして背中のほうからも、ジルベルトの怒りに満ちた気迫がジリジリと伝わってくる。

「この『鍵』の持つ意味を知るなら、その《《指示》》に従い、鍵の所有者に平伏せねばならぬ。なのに王女は平伏どころか罵声とも取れる発言を繰り返した。マリアが身分を隠しているだと? 何を今更、知ったような事を……!」

 皇太子が現れたことに、大公夫人をはじめ皆はとうに気づいていたのだろう——おそらくあの下女も。

 リズロッテが青ざめるよりも先に震えあがったフィフィーは、今にも泣き出しそうな顔をしてうつむいている。
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