【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 ジルベルトはリズロッテの背後を離れ、アルフォンス大公夫人の背後を横切ると、マリアの傍に立った。
 怒りを(たぎ)らせる冷酷な瞳はそのままに、身を屈めてマリアの肩を抱き寄せる。

「我が寵姫を、こんなに怖がらせたのは誰だ……!」

 ジルベルトは令嬢たちを順に()め付けた。
 後宮の女たちに向ける冷ややかな態度は今も変わらぬ。

 だが、肩を抱くマリアを見つめる視線は途方もなくあまく、優しい。
 マリアの耳元でそっと囁かれた言葉があった。

「……俺が(あだ)を取ってやる」

 後宮の花たちは皇太子の激昂に怯えながらも、かつて見たこともないその一面に戸惑いを隠せない。
 令嬢たちは羨望の眼差しで小さく息を呑み、ほのかに頬を染めるのだった。
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