【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 次にマリアが見据えたのはリズロッテだ。
 
「私には、リズロッテ様の国を救えるような力はありません。
 ですが、帝国と殿下のお力を信じてリズロッテ様と共に請い願い、フォーン王国が助かる道を考えることはできます。

 フォーン王国は農民人口の割に肥えた農地が少なく、農作物の生産性が低いという覚えがあります。農閑期に大勢の農民が出稼ぎに出ても、不況に煽られた街には雇い口がない。
 失業者は増え、農作物を含めた税の徴収が滞るために財政難となる。国は領民に十分な援助ができず、更なる失業者が増える……まさに負の連鎖です。

 帝国はここ数年、ロレーヌ川の橋梁工事を進めているが難航しているのだと殿下に伺いました。力仕事をする人員が足りず、工事が思うように進まないのだと。
 ロレーヌ川の向こう岸にはフォーン王国があります。橋梁工事の人手が足りていないのを、フォーンに溢れた農民や失業者を雇うことで解消できないでしょうか。
 ロレーヌ川に橋が渡れば河川で分断されている東西地域が繋がって、人々は容易に両地域を行き来できるようになります。フォーン王国にとっても商業を活性化させる切り札となるはずです」

 それまで大人しく静かで、小さくなっていたはずのマリアの変容に誰もが呆気に取られていた。
 リズロッテなどはぽかんと口を開けたまま、虚を突かれたまま顔が戻らない。
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