【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「メイド風情の小娘が小賢しい。こちらに寄越せと言っているのが聞こえんのか!」

 マリアの手から、侍従が無理矢理にペンダントを奪い取ろうとしたその時だ。

「ジルベルトが見つかったと言うのは本当か?!」

 艶めいた声がして、周囲の者が一斉に道を開ける。

 ——宰相、様……?

 その声を聞き、マリアは警吏の制止を振り払って立ち上がる。マリアの視線は、若く美しき宰相、ロベルト・バルドゥの姿を捉えた。皆が固唾を飲んで見守るなか、マリアは彼の元へと歩き、大切そうに胸にあてたペンダントを差し出した。

「宰相、様……。お願いです、ジルベルトを助けて……」

 ロベルト・バルドゥの目に飛び込んだのは——。
 ウエィン国内で行方不明になっている帝国の皇太子、ジルベルト・クローヴィスの、(いのち)にも等しい彼の『王印』。

 そして。お仕着せの白いエプロンを真紅の血に染め、その『王印』を涙ながらに差し出す若いメイドの姿だった。
< 43 / 580 >

この作品をシェア

pagetop