【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 あたたかな胸のなかで、喜びに頬を染めて目を閉じるマリアに、ジルベルトの言葉が重ねられる。
 それはとても哀しくて、心をぎゅっと掴まれる苦しさを伴うものだ。

『できるだけ長く……一緒にいられたらと、思っている』

 ジルベルトは、寵姫に溺れる愚王などではない。
 帝国の繁栄とすべての領民のために、皇太子の隣に立つのに相応しい妻を選ぶ。
 たとえ一時的な恋人になれたという奇跡のような僥倖があったとしても、当然、別れの日が来る。
 そんなジルベルトだからこそ、マリアは心から慕うのだから。


「うにゃぁ」
(結局、舞踏会には出るの?」 

「はぁ……」

 ジルの美しい銀色の毛並みを、小さな頭から背中にかけてゆっくりと撫でながら、マリアはため息をつく。

 部屋の中を振り返ったその視線の先には、星祭りの日にあつらえてもらったドレスと装飾品の数々があった。
 マリアの部屋の《《花畑》》のなかに、まるで妖精のお姫様が着るような美しいローブデコルテが飾られている。
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