【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
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 マリアを先導しながら本宮に向かって歩くアーニャは、いつもと違うよそ行きの顔をしている。
 イベント用なのか、皇城内の使用人やメイドたちのお仕着せも色とりどりで、デザインも華やかだ。

「獅子宮殿にお戻りになる時は、近くにいるメイドか侍従にお声掛けくださいませ。宮殿の手前まで案内してくれるはずです」

「あの、帰りは一人でも平気です。後宮に向かう時にもう何度か本宮の中を行き来していますから」
「お好きになさればよろしいですけれど。本宮は広いので、迷っても知りませんよ?」


 祝賀会も三日目の今日。
 早朝から新たに馬車が続々と皇城に乗り入れるのを、マリアは自室のバルコニーから眺めていた。
 祝賀会と晩餐を経て丸三日皇城で過ごす者よりも、どうやら三日目の夜の舞踏会にだけ招待された者たちの方が多いらしい。

 ——いったい、どれだけ大勢の方たちが招かれているの……?!

 会場にいる人々が多ければ多いほど目立たなくなれるのだから、その方が好都合だとも思う。
 華やかな場所に出向くのは記憶も曖昧なほどに幼い頃以来だ。
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