【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 自室に飾られた妖精のドレスをぼんやりと眺めながら、途方に暮れてしまう。

 ——これを、どうやって着ようかしら……

 コルセットが要らない普段着のシュミーズドレスとは違い、盛装用の衣装を着るためには何人かのメイドの手を借りねばならない。
 とにかく一人では扱いようがないのだ。

「ねぇ、ジルっ。一人でドレスが着られなかったのでやむを得ず欠席しました! って言うのはどう?」

 往生際が悪いマリアを、自分の寝床で丸くなっていたジル猫が上目遣いでチラと見た。 





 午後三時を過ぎた頃。
 自室の扉がノックされれば、アーニャを含めた三人のメイドが押しかけるように入ってきて、マリアが戸惑っているうちに飛ぶような速さで舞踏会の支度を済ませてしまった。

 妖精のお姫様が纏うようなドレスは、着せつけてもらえば見た事のないほどに素晴らしくて——。

「アーニャさん、皆さん。お支度を手伝ってくださって有難うございます……!」
 
 薄化粧の(かんばせ)をほころばせるマリアを、アーニャは冷ややかに一瞥する。
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