【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「お礼には及びませんわ。一応、《《これ》》もわたくしたちの仕事ですから。それでは、わたくしはこの後も仕事が詰まっていますので! 準備ができ次第、会場の『鳳凰の間』に案内いたします」

「お忙しい時に、お手間を取らせてしまってすみません」

 ドレスの裾を両手で摘んでそっとお礼のお辞儀をすれば。
 アーニャ以外の二人のメイドたちは目を細め、うっとりとそれを眺めた。


 *


 双扉の両脇に立つ二人の扉係がこちらをじっと見つめている。
 ここまで来る道中も、廊下で立ち話をする招待客らしき者たちと何度も目が合ってしまい、そのたびに心臓が縮む思いだ。

 ——私が臆病になり過ぎているせいで、周りからひどく見られているような気がしてしまう。
 会場に入る前からこんな調子では身が持たない。大丈夫……。少しだけお邪魔して、すぐに失礼しよう。

 舞踏会と言うからには、ジルベルトだってきっと、選ばれた誰かと踊るのだろう。
 正直、そんな光景は見たくなかった。
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