【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
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部屋の扉が勢いよく開いて、息を切らせたクロエが飛び入って来た。
「マリアっ……ここを出て行かされるって本当?!」
片手で抱えられるほどの小さなボストンバッグに、衣服を詰めていたマリアが顔を上げる。
「クロエったら。相変わらず情報が早いわね」
「早いのはあなたよ、やっと昼休みになったから飛んで来ちゃった。荷造りなんか始めて本当に出ていくつもりなの? そんな理不尽な処遇を黙って聞くなんて、マリアはお人好しすぎるのよ。私がメイド長様に抗議してやるっ!」
目から火を吹きながら扉に向かおうとするクロエを、慌てて両手で繋ぎとめた。
「怒ってくれてありがと。でももう何を言っても無駄なの。私がそうしたくなくても、メイド長様に訴えても。この国のお偉い様方が決められた事だから……どうしようもないの」
「でもなんで!? なんでマリアが追い出されなきゃいけないの? あの囚人はマリアのおかげで命拾いしたって言うのに!」