【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 眉根を寄せたジルベルトは奥歯をぐ、と噛み締める。
 仔猫を床に下ろすと踵を返し、本宮に続く回廊を小走りで戻るのだった。

 若い令嬢たちは、突然廊下に現れた皇太子に首ったけだ。
 しとやかに見せようと声をひそめて頬を染め、わざと大げさにお辞儀をして、蒼く凛々しい瞳に少しでも映ろうと躍起になる。

 そんなものは当然のように無視だ。
 令嬢たちだけでなく多くの招待客たちに絡まれそうになるが、適当にあしらった。

 ——早く会いたい、会って愛らしい姿を存分に愛でたい。

 はやる気持ちを抑えながら『鳳凰の間』に着くと、全部で六つある入り口の扉番に順に声をかけて回る。

退紅色(ストロベリーブロンド)の髪の令嬢を見なかったか?!」
「半時間ほど前です。珍しい髪色の、とても美しいご令嬢でした」

 そして拝殿から最も離れた六つ目の入り口の扉番に、覚えがあると聞きつけた——。


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