【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 リズロッテが後宮入りをした一番の目的は、皇妃になって自国への支援を取り付けることだった。
 けれどいくら頑張っても、皇太子の目にリズロッテが映ることはなかった。

 自分でも制御の効かぬ嫉妬心がむくりと首をもたげてくる。

「……リュシエンヌ王女、哀しい人ね? 正体を知られれば殺されてしまう。わかっているのにそばにいたいだなんて」

 嫉妬心と同時に湧き上がる憐れみは、皇太子ジルベルトの《《冷酷さ》》によるものだ。

「皇太子殿下は容赦なくあなたを殺すでしょう——それが『寵姫』であっても。なぜならアスガルドの第三皇子ジルベルト殿下は、皇太子の地位に就くために——欲望の赴くまま、実の兄を二人も手にかけたのだから」

 前皇太子セルヴィウスと第二皇子が三年前に身罷ったと、アーニャから聞いている。
 そのおかげで現皇太子がジルベルトだと気付いたのだ。

 だが、ジルベルトの実の兄である二人の死因は明かされなかった。

「殿下が……実のお兄様たちを殺したのですか……?」
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