【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 ——失うのが怖かった。
 正体を明かせば、海の泡のように消えてしまうような気がして不安だった。

「すまなかった……!」 
 ほぼ九十度に背を曲げて頭を下げる。

 ——マリアは皇太子を……もう、怖がらずにいてくれるだろうか?

 花のような笑顔がジルベルトの告白を受け入れる。
 大きな瞳を潤ませて愛らしい微笑みを返してくれる。
 そんな淡い期待を、抱いていた。

 だがマリアの反応は——想像していたものとは違っていた。

「はい……気付いておりました。皇太子殿下」

 一定の距離を保ったまま、(うやうや)しく淑女の礼を取る。
 それはどこか他人行儀にも見えて、顔を上げたジルベルトを戸惑わせた。

「お兄様たち二人が三年前に身罷られたことも聞きました。恐ろしい人だった皇太子セルヴィウス殿下は、もうこの世にはいないのですね」

「ああ……その通りだ。安心、したか?」

「…………」
 返事が聞けぬまま、マリアは悲しげに顔をそらせてしまう。

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