【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 人々のため息と、憧憬と羨望の眼差しのなかで踊りながら、マリアはジルベルトの面輪から目を離せずにいた。
 身体を旋回させれば、凛々しい腕に腰を抱かれてしっかりと引き寄せられる。

 大丈夫。
 その言葉通り、パートナーに微塵も不安を感じさせない力強さでエスコートされている。

 ——俺だけを見て。

 ただその言葉を胸に、心安らかでいようとした。


 ——そう……。
 今はただ、あなたの事だけを見ていたい。私だけを映すあなたの瞳に愛を訴えていたい。あなたが好きだと……心から、愛していますと。


「俺もマリアだけを見てる」

 ふと囁かれた言葉に胸の奥がきゅんと痛んだ。
 きっとこの瞬間に刻まれていく一秒一秒が、人生でいちばん幸せな時間になるだろう。

 嬉しいはずなのに。
 なぜだろう……目頭が熱くなって、うるうると視界が滲みはじめる。

 拭うことのできない涙が、頬をポロポロとこぼれ落ちた。





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