【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「やっぱりあんたはお人好しすぎるわ。マリア」
「でもね、本当に有り難いお話なの! メイド長様のはからいで、別の働き口を紹介してもらえる事になったから……っ」
「へ?! そうなの??」
「西の国境に近い小さな町なのだけど。そこにある酒場で住み込みで働けるのですって」
「良かった……。ここを出たあと、マリアがどうするのか心配だったの。西の国境なら休みの日に会いに行けるわ。でもマリアのことだから。また失敗ばかりして、その酒場まで追い出されないでよ……?」
笑顔のまま背中を向けたクロエは、目尻に涙を滲ませている。
マリアはクロエの肩が震えているのを察知して、彼女の華奢な背中にぐわっと抱きついた。
「ええ、きっとまた会えるわ。短い間だったけれど、あなたとルームメイトになれて楽しかったわ。今までありがとう……クロエ!」
ジルベルトの容体が心配だけれど……。
そこまでの要人にもしものことがあれば、ウェイン城内は今頃パニックになっているはずだ。そして、今のところその気配は見られない。