【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「んぅ」
 のしかかる胸板を思い切り押すと、ようやく唇が離れた。

「……は、ぁっ、……待って」

 額にかかる前髪を気だるげに掻き上げたジルベルトは、ひどく悲しそうな顔をする。

「身体に触れられるのは、嫌か?」
「……嫌、とかじゃなくてっ。夢なのに、夢じゃないみたいで……」

 え? と首を傾げた面輪が、一瞬間をおいてからくっくと微笑う。
 無垢な少年のような微笑みに、組み敷かれたままぼんやりと見入ってしまった。

「君は……ッ。《《これ》》が全部、夢だと思っているのか?」

 ——えっ、ええっ?!

 言われてみれば、ずっとおかしかった。
 キスをされているあいだも息が苦しかったし、胸にふれられた時だって——。
 夢の中なら息苦しさなんて感じないのではないか。

「な……何故っっ……ここにいるのですか?! ぶっ、舞踏会は……」

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