【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「お屋敷……?」
 そんなものは要らないと言えば、ジルベルトをまた悲しませてしまうのだろう。

 『冷酷皇太子』。
 自分の口から出た浅慮な言葉が何度も頭をよぎり、そのたびにジルベルトが見せた失望の眼差しが胸を締め付けた。

 ——ジルベルトはもっと苦しかったはずよ……?

 感情に任せて、取り返しのつかないひどい事を言って傷つけた。

 ——ジルベルトの優しさは誰よりも知っている。それなのに……!


「……わかりました。お返事まで、少し時間をいただけませんか?」

 一瞬は表情を曇らせたものの、こくりと頷きフェルナンドは席を立つ。マリアも続いて立ち上がり、軽いカーテシーで礼を返した。

 そのまま立ち去るのかと思っていると、ためらうように突っ立っている。
 仕方なくマリアが顔を上げれば、ようやく口火を切るのだった。


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