【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「……っ。私はその、別に、あなたを嫌っていた訳じゃないのだ。皇太子が立場を忘れて寵姫に溺れるのを、側近として黙って見ているわけにはいかぬだろう? ただ、それだけだった」

 急にそんな事を言い出すなんて、どうしたのだろうと戸惑ってしまう。

「子爵様のお立場はよく存じ上げております。どうぞお気になさらないでくださいませ」

「皇城を出たら全てを忘れて、のんびりと暮らすがいい。時々、友人を招いて茶会を開くのも良いのではないか? 後宮の令嬢らとは良い友人関係を築いたのだろう?」

 帝国のために皇太子を正しい方向へと導くのは側近であるフェルナンドの役目だ。
 けれどマリアは、女嫌いで名を馳せた皇太子(親友)が初めて恋に落ちた相手でもある。

 フェルナンドがもしも単純にジルベルトの親友という立場だったなら、全力でその恋の後押しをしていただろう。

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