【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「期待に応えられずに、本当にごめんなさい……ミラルダっ」

 ——ミラルダのように強くなりたかった。

 愛する者を、奪い取る。
 帝国皇太子の隣に立てる資質を養い、その強さとともに……欲しいものは欲しいと、これだけは譲れぬと、心の限りに叫びたかった。


 当たり前すぎて忘れてしまうことがある。
 誰だって、考えもしないだろう——ミラルダだって。

 ——ジルベルトの隣に立てる者は、その権力、強さ、責任、立場など全ての資質の前に、『生き続けること』を許された者だけなのだから——。


 全ては天の思し召すところであって、大きな時の流れとともに運命も宿命も流れゆくもの。
 ジルベルトの優しさに包まれた日々は、一生分の幸せな時間だったと心から思える。
 宿命が決まっているのだとしても、命の長さが決まっているのだとしても……思い残すことはもう何もない。

 何が起ころうとも、愛しているからこそ——怖くない。

 ——ジルベルトに伝えよう。
 シャルロワの王女、リュシエンヌは私だと。




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