【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 アルフォンス大公夫人に連れられ、執務室にやってきたリズロッテ王女の告白はあまりにも唐突だった。

「殿下も殿下だ。雲隠れ王女が皇城内に居たなど! この由々しき事態……知らなかったでは済まされませぬぞ? リズロッテ王女は『生き残りの王女に復讐心は無い』としきりに訴えていたが、なぜ言い切れる。殿下に身内を殺され自国を奪われたのだ、確信は持てまい。危険な女を、ましてやシャルロワの王女だとも知らずにお茶役に据えていたなど……! 皇太子のみならず帝国の威信に関わる恥ずべき事だ」

 ジルベルトは碧い目を細めた。
 突如として舞い込んだ思いもよらぬ事実を、まだ受け入れられない自分がいる。

 ——マリア……いや。
 リュシエンヌ王女と、呼ぶべきだろうか。
 大公が言うように、彼女は戦火のもとで親族全員を皇太子に殺されている。復讐心が沸いてもおかしくはなかった。
 だが今までそれをしなかったのは、親族の仇は俺ではなく、皇太子セルヴィウスだと思い込んでいたからかも知れない。

「思い込ませたのは俺だ……」


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