【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 そして舞踏会の夜、皇太子の正体は自分だと告げた。


 ——マリアの態度が変わったのはその後だ。

 これですべてが繋がる。今やっと、理由がわかった。
 《鍵》を要らぬと突き返し、更には俺がセルヴィウスと同じ冷酷な皇太子だと……。
 無理もない、俺は彼女の家族を殺した張本人なのだから。

 シャルロワの王城で王族たちを手にかけたあと、血濡れた剣を握ったまま隠された王女を探しに離塔へと向かった。
 王女を装ったメイド一人を残してリュシエンヌは逃げ去ったが——もしもあの時リュシエンヌを見つけ出し、他の王族と同じに剣を振り下ろしていたら——。


 口元を手で覆った。
 吐き気がぬらぬらと込み上げる。

 ——マリアをこの手で斬り殺していた……?

 暗闇の中にひっそりと佇む死の影を見た気がした。
 血濡れた長剣を振るうその影は——自分自身。

 背中にどっと冷たい汗が滲むのがわかる。鼓動は早くなり、息が詰まりそうだ。


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