【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 闇を照らす煉獄の炎は塔の内側を支配する。窓の外にどうにか逃れようと、黒い煙がまるで生き物のように闇の空へと立ち昇る。

「り、リーナ……っ」

 ようやく塔の入り口まで差し掛かったとき、炎を逃れた一抹の安堵から足がすくんで動かなくなってしまった。
 家族のように慣れ親しんだ使用人たちの無残に切り裂かれた亡骸(なきがら)を目のあたりにするいう衝撃。まだ幼さの残る少女がそら恐ろしい光景を見せられたのだから、無理もない。

 リーナはしゃがんでリュシエンヌの瞳を見上げ、優しい笑顔を紡ぐ。

「ここまでよく気張られましたね。ここを出れば『(まつり)の森』はすぐそこです。宵闇のなか、軍兵は恐ろしがって森の中までは立ち入りません。姫様が幼い頃から慣れ親しんでこられた森です。川を辿れば迷うことなく街道に出られます。良いですか……姫様。ここを出たらすぐに森に走るのです……この先……何があっても」

「リーナは?! あなたも一緒に来てくれるのでしょう……? あなたがいないと、私……っ」


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