【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 目頭いっぱいに溜めた涙を潤ませて訴える少女をあやすように、リーナはメイドキャップに収められたストロベリーブロンドの髪を優しく撫でた。

「もちろんですとも。何があっても、わたくしはリュシエンヌ様の心と共にあります」

 穏やかに紡がれるリーナの言葉と優しい微笑みに安堵したのか、リュシエンヌはこくりとうなづいた。
 しっかりと手を繋ぎ、二人はいよいよ塔の外に出る。緊迫に揺れるリーナの二つの()は、離塔の裏にある森をしっかりと見据えていた。

「———待て!」

 地を這うような太い声が背後から二人の背中を脅かした。
 振り返ることなく、リーナはリュシエンヌを(ひざまず)かせて耳打ちをする。

「姫様……決してお顔を上げてはなりません。何があっても。そして場を見計らって森に走るのです」

「リュシエンヌ王女だな!?」

 野太い男の声が頭上から降ってくる。
 リーナの言いつけ通り、リュシエンヌは身体をできるだけ低く折り畳み、唇を噛み締めて目を瞑り、ぐっと頭を下げた。


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