【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「あなたごときに、わたくしが名を名乗る必要はありません」

 リーナがリュシエンヌの目の前に立ちはだかっているのがわかる。
 そこへ、バカラッバカラッ……地を蹴り上げる馬の(ひづめ)の音。

「ライデンバーク! 見つけたのか!?」

 若い男の声がリュシエンヌの耳をかすめた。

「殿下のお手を煩わすまでもありません、この私が……!」

 それはリーナが声をあげる間も無く突然のことだった。

 ズサッ———

 鈍い音とともに、リュシエンヌの白い頬に飛沫が飛ぶ。頭を下げていても、紅い血に染まった白いドレスの影が無惨に崩れ落ちるのがわかった。
 そのドレスとは……つい先ほどまで、自分が身に付けていたものだ。

 ——リーナっ!?


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