【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
リュシエンヌの目の前に横たわるものは、『遺骸』だ。
先ほどもリュシエンヌに優しい笑顔を見せ、いつも共にあると言ってくれた、大好きなリーナの。
がくがくと震える肩、冷たい汗が滴り落ちる背中。
頭を低くして身体をこわばらせ、下を向いたまま、リュシエンヌはすっかり青ざめてしまった薔薇の花弁の唇をぎゅっと弾き結んだ。
「殿下。このメイドも殺しますか?」
殺す、という文言にどきりと心臓が打たれる。
自分もリーナのように——残酷に切り刻まれた使用人たちのように、ここで命を絶たれてしまうのかも知れない。
——『殿下』……?
では私の目の前に立っているこの男が、帝国の皇太子……!
鈍く光る甲冑に包まれた皇太子の足元が見え、その靴先に並ぶように、生々しい血液が地面に滴り落ちる長剣の刃のきっ先が見えた。
おそらく父王や兄弟たちは既にこの男に殺されたのだろう。そしてあの愚王の御代も、このシャルロワ国とともに滅び去るのだろう。
「……いや、まだ子供だ。殺さずともよい。奴隷として捕らえておけ」
先ほどもリュシエンヌに優しい笑顔を見せ、いつも共にあると言ってくれた、大好きなリーナの。
がくがくと震える肩、冷たい汗が滴り落ちる背中。
頭を低くして身体をこわばらせ、下を向いたまま、リュシエンヌはすっかり青ざめてしまった薔薇の花弁の唇をぎゅっと弾き結んだ。
「殿下。このメイドも殺しますか?」
殺す、という文言にどきりと心臓が打たれる。
自分もリーナのように——残酷に切り刻まれた使用人たちのように、ここで命を絶たれてしまうのかも知れない。
——『殿下』……?
では私の目の前に立っているこの男が、帝国の皇太子……!
鈍く光る甲冑に包まれた皇太子の足元が見え、その靴先に並ぶように、生々しい血液が地面に滴り落ちる長剣の刃のきっ先が見えた。
おそらく父王や兄弟たちは既にこの男に殺されたのだろう。そしてあの愚王の御代も、このシャルロワ国とともに滅び去るのだろう。
「……いや、まだ子供だ。殺さずともよい。奴隷として捕らえておけ」