【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ——私が話す前に、リズロッテ王女が打ち明けてしまったのね。

 独房に鍵をかけながら、騎士の一人が吐き捨てるように言った。

「可哀想だが致し方あるまい。せめてもの慈悲だ、目隠しは外してやる。何があったかは知らぬが、皇太子殿下のご指示だ」

 驚いたのと同時に、残酷な失望と悲しみが胸を突き刺した。
 正体を知られれば殺される。
 わかっていたけれど、心の片隅にほんの少しだけ——「マリアが大事だ」と言ってくれたジルベルトへの儚い期待があった。

 ——悪夢に病むほどの繊細な心を傷つけてしまった。それに私を守るものだと言って与えてくださった鍵を突き返したのだから……嫌われて当然。

 でもせめて……。


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