【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「出逢ってはいけなかった。出逢うべきじゃなかった……っ」

 こぼれ落ちそうになる涙をぐ、と堪えて顔を上げれば——鉄格子の合間から見える星空の向こうに、微笑みかける二つの面影が見えたような気がした。

「お母様、リーナ……。私も、もうすぐそちらに参ります」

 胸の前で祈るように両手のひらを組んで静かに目を閉じた、その時だ。
 つかつかと冷たい石畳の床を歩く靴音が、暗闇のような廊下の向こうから響いてくる。

 は、と振り返り、思わず目を疑った。
 会いたいと言う想いが強すぎるせいで、まぼろしでも見ているのだろうか……とも。


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