【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 漆黒の礼服の上に重そうなローブを羽織ったジルベルトが、こちらに向かって歩いてくる。銀糸のような睫毛は伏せがちで、薄い表情からは感情を読み取ることができない。

 無言のまま独房の前に立つと、マリアを一瞥する。氷のように冷たい瞳に、背中がぞわりと粟立った。

 ジルベルトは石の床にすっと片膝をつき、ローブの胸元からジャラリと鍵の束を取り出して独房の鍵を開ける。立ち上がって扉を開くと、鍵束を無造作に足元に放り投げた。

 静けさの中、無数の鍵が石の上に落ちる大きな音が響き渡る。
 口火を切ったのはマリアだった。
 
「ジルベルト……?! どうして……っ」

 戸惑うマリアを気に留める様子はなく、その表情は堅いままだ。

「いいから、これを着て」

 腕に掛けていたローブを手際良く華奢な肩に羽織らせると、白い手袋をはめた手をマリアの胸の前に差し出した。

「おいで。今度は俺がマリアを救い出す番だ」




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