【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 どれほど走ったか知れない。

 皇城からとても遠い場所のような気がするけれど、本当はそれほどではないのかも知れない。

 抱えられるようにして馬を降ろされる。
 顔を上げれば、そこは森の木々が開けた高台の草地——頭上には、宝石を散りばめたような星空が半円を描いて広がっていた。

「祭りの日にも来たこと、覚えてる?」

 牢を出てから初めて聞く声に泣きそうになる。
 ああ……自分はどれほどこの人が好きなんだろう。

「……もちろんです。今夜も、星がとても、綺麗ですね」

 絞り出すように紡いだ言葉は震えていた。

「今夜は星月夜だ。星たちが主役だからね」
「どうして……また、この場所に?」

 ローブに覆われた大きな背中は崖の方に向かって歩いていく。威圧を感じながら後を追って歩いた。

 答えをくれないジルベルトの顔を見るのが怖い。
 独房で見た碧い瞳は、とても冷たく揺らいでいたから。


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