【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 一瞬、虚を突かれた顔をしたが、ジルベルトは無言で目を細め、マリアを見つめ返す。

「どうしたのですか……。あなたはシャルロワ王家の血筋を根絶やしにするために、殺し損ねた王女を探し続けてきたのでしょう? リュシエンヌはここにいます。もう、逃げも隠れもしませんから……っ」

 意を決したように空を仰ぎ、震えながら、ぎゅ、と目を閉じた。


 ——リーナ、あなたにもらった命を……ごめんなさい……っ


 拳を握りしめた指先がほどかれ、五本の指がジルベルトの指先に絡めとられる。

 ザン! と鈍い音がして、長剣が勢いよく地表の土に刺された。
 細い腰が引き寄せられて、大きな胸のなかに包まれるように抱きしめられる。

 退紅色の長い髪がはらはらと宙に舞った。


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