【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 いとおしく懐かしい麝香の薫り——。

 何が起こっているのかわからず、マリアは閉じていた目を開けてまばたきを何度も繰り返す。
 後頭部を包む大きな手のひらから温もりが伝わって、ああ、自分はまだ生きているのだと知らされた。

「殺すためじゃないんだ。探していたのは、妻にする人——」

 風の音に消えかかる言葉に耳を疑った……ジルベルトは、今、何と言ったのだろう。

「あ……の……っ?」

 マリアが顔を上げると、やんわりと腕の力が緩まった。
 おそるおそる見上げれば、途方もなく優しく揺れる碧い瞳に捕らわれてしまう。
 そしてジルベルトは、茫然とするマリアに信じがたい言葉を放ったのだった。

「俺の妃になって、シャルロワの地を共に治めてくれないだろうか……? かつて君を愛した農民たちが、今も君を求め続けている」


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