【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ——シャルロワの地……
 私が愛した農民たち……?

「シャルロワの民は、生きて、いるのですか……?! 殺さずにいて、くださったのですか……」
「俺はセルヴィウスとは違う。むやみに民を殺したりはしないよ。それに」

 繊細な指先が、まるで宝物にふれるようにマリアの頬を撫でた。

「王女リュシエンヌが、僅かな母君の財産まで投げ打って、守ろうとした民なのだろう?」

 子供をあやすような言葉の響きと優しい瞳の輝きに、(こら)えていたものが堰を切って溢れ出す。
 目頭が燃えるように熱くなり、次々と流れ落ちる涙をどうすることもできないのだった。

「どうした……? 俺の花嫁では嫌か?」
「いやだなんて、そんな事っ……嬉し、くて……」

 ジルベルトの指先は頬を滑り、こぼれる涙をそっと拭ってくれる。

「愛するという気持ちは、俺には良くわからぬ。だがそれが大切な女性(ひと)のためになら、自分はどうなっても良いと思える気持ちだとしたら、少しはわかる気がする」


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