【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 ——帝国のためだけに生きてきた。
 そのための生涯だと決めていた。
 マリアと出逢って、初めてそんな自分に疑問を抱いた。
 帝国の皇太子だからではない。一人の男としてマリアと……シャルロワの王女リュシエンヌと共に生きたい。

「マリア……愛してる。結婚しよう」

 もう一度強く腕の中に抱かれ、アメジストの瞳が弾かれたように見開かれる。
 
 こくりと小さく頷いて、抱きしめられた腕の中から精一杯に両手を伸ばした。
 ジルベルトの腰に手を回すと、全ての想いを注ぐように、ぎゅうっと力を込める。

「はい……っ」


 *


 幸せなくちづけを交わすふたりを、満天の空に煌めく星々が静かに見下ろしている。

 その中心に、誇るように存在感を放つ光があった。
 星祭りの夜空には見ることができなかった、幸せをもたらす蒼い星——「ラウエル」が、今夜はその顔を覗かせている。

 星々の下で結婚を誓う者たちの生涯の幸せを優しく見守るように、夕星は、ひときわ明るい煌めきを放つのだった。


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