【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
ジルベルトが部屋の奥に目をやると。
美しく結えた長い髪のひと束を片方の肩に垂らし、淡い桜色のドレスを凛と着こなしたマリアが日の光を背にしてふわりと座っている。
華奢な白い首が傾けば、耳元に控え目に飾られた小花の形の装飾品が上品な輝きを放つ——それはまるで蛹の鞘を脱ぎ捨て、美麗な翅を広げ始めた蝶のように初々しく、神々しい。
ふっくりと艶やかな薄化粧の唇にどくりと鼓動が脈打った。
首に巻かれた大きなリボンは、毎夜たやさず愛し合う間にジルベルトが点々と付けた所有の証を隠すためのものだろう。
不意に狂おしいほどの愛おしさが込み上げて、今すぐにでもリボンを解き、その痕跡に口付けたい衝動に駆られるのだった。
「執務室を、また抜けて来られたのですか?」
愛らしい声は春の訪れを告げる鶯のようだとジルベルトは思う。
椅子から立ち上がったマリアが恭しく頭を下げるので、迷わずに歩み寄って肩を抱き、額に優しいキスを落とした。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。今日も綺麗だよ……マリア。何度言っても足りないほどだ」
美しく結えた長い髪のひと束を片方の肩に垂らし、淡い桜色のドレスを凛と着こなしたマリアが日の光を背にしてふわりと座っている。
華奢な白い首が傾けば、耳元に控え目に飾られた小花の形の装飾品が上品な輝きを放つ——それはまるで蛹の鞘を脱ぎ捨て、美麗な翅を広げ始めた蝶のように初々しく、神々しい。
ふっくりと艶やかな薄化粧の唇にどくりと鼓動が脈打った。
首に巻かれた大きなリボンは、毎夜たやさず愛し合う間にジルベルトが点々と付けた所有の証を隠すためのものだろう。
不意に狂おしいほどの愛おしさが込み上げて、今すぐにでもリボンを解き、その痕跡に口付けたい衝動に駆られるのだった。
「執務室を、また抜けて来られたのですか?」
愛らしい声は春の訪れを告げる鶯のようだとジルベルトは思う。
椅子から立ち上がったマリアが恭しく頭を下げるので、迷わずに歩み寄って肩を抱き、額に優しいキスを落とした。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。今日も綺麗だよ……マリア。何度言っても足りないほどだ」