【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 フェリクスは《《ヤンデレ》》の領域だと言って笑うが、ジルベルトは気にしていない。
 『愛してはいけない』と堪え、押さえつけていた感情が解放されただけだ。

「それに。大事な妻の身を夫が案じるのは当然だろう?」
「ふふ、心配なさらなくても後宮は安全です……。それより、執務官と子爵様が殿下を探されているのでは?」

 マリアの言う通り、ツノを生やしたフェルナンドが今頃また怒り散らしているだろう。
 そんな彼もシャルロワの王女はマリアだと明かした時、

 ——良かったな……ジルベルトッ

 男泣きしながら強烈なハグを喰らわせたフェルナンドは、幼馴染の幸せを心から願う親友の顔をしていた。

「俺に会えて、マリアは嬉しくないのか?」

 ほんのり紅い頬にジルベルトの繊細な指先が愛おしげに滑る。その指先を包み込むように、華奢な手のひらが重なった。

「嬉しくないはずがありません、とても、嬉しいです……でもっ」


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