【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「……でも?」

 マリアはしきりに背後を気にしている。
 愛しい人を甘く熱く見つめる碧い瞳が揺らげば、見兼ねた大公夫人が「ゴホッ!」と故意に喉を大きく鳴らしたのだった。

「お二人が深く愛し合っておられる事はよく分かりました。ですが……ここは後宮です。その先の事は、今夜お二人だけで、(ねや)でなさってくださいませ」

 仕方ないな……と言いたげにしぶしぶマリアを離したジルベルトは、温度を下げた目を大公夫人に向けて言葉を繋げた。

「夫人、アルフォンス大公はどうしている? 謹慎は今日までだろう」

 皇太子の許可なくマリアを独断で投牢した大公は、処罰が下るまで皇城内に自邸として構えた宮殿で震えていたが、当面の謹慎を聞いて首が繋がったと安堵の色を隠さなかったという。

「ええ……。明日の朝、出仕した際に改めて殿下に謝罪の意を示したいと申しておりました」

「俺の許可を得たなどと虚偽を言ってマリアを投獄したのだ。罪は重いが敢えて問わぬ。大公は有能な人だ。断罪の代わりに命が続く限り帝国の繁栄、そして俺と妃のために尽力すると誓ってもらう。マリア……それで良いか?」


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