【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 目と目が合えば、公爵の睨めつけるような瞳がぎろりと鈍いかがやきを放った。
 ジルベルトも負けじと睥睨する。

「———ッ」

 じりじりとせめぎ合う彼ら二人のどちらが口火を切るのだろうか。
 異様なまでの緊迫が漂うなか、場に居合わせた家令や近衛騎士たちはごくりと生唾を呑み込んだ。

 

 *



 さほど広くない廊下の壁一面に、所狭しと絵画が飾られている。
 無造作に壁沿いの床に立て掛けられたものの中には、キャンバスが剥き出しのまま色が塗られていないものもある。

 向かっているのはミラルダのアトリエだろうか。
 案内のメイドの後ろを歩きながら、マリアは飾られた絵画の一枚一枚に見入っていた。
 人物画、風景画、動物を描いたものや抽象的なものまで様々だが、どれも一目で心を奪われてしまうほど素晴らしい仕上がりだ。


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