【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
ゆっくりと目を閉じて小さく息を吐くと、マリアは意を決したように顔を上げるのだった。
「私は……っ、ジルベルト殿下を愛しています。いつまでもずっと、殿下のおそばにいたいのです。ジルベルト殿下だけは誰にも譲れません。ミラルダ、たとえあなたでもっ。私が心から尊敬するあなたでも……絶対に、譲れません……!」
熱を帯びた声は相手を威圧する凄みすらも孕む。
マリアの剣幕はミラルダが動揺してしまうほどだった。
——本当に、あなたなの……?
ミラルダが知るマリアは—— 誰に対しても底抜けに優しいが、自尊心の低さと卑屈さと言ったら呆れてしまうほど。
褒めても素直には認めない。言いたいことがあっても腹に抱えたまま、ましてや欲しいものを自ら強く主張するなんて……考えられなかった。
「私はメイドのラムダに必要以上に依存し、自分の意志では何も決められず、言いたい事があっても言葉に出そうともせずに心の中にしまい込んだままでした。そんな私を、あなたは案じてくれたのですよね? 時には相手を説き伏せても、強く主張しなければならない。欲しいものは欲しいと言わねばならない……大切なものを失ってしまう前に。ミラルダが言った『強かに奪え』とは……そういう事なのですよね?」